ハッ!!
あ〜、そうか。
これは夢なんだ。
起きて、夢から覚めたらきっと、Fateのキャストは変更になってて、
ぱにぽにだっしゅ!なんてモノは放送してないんだ。
そうに違いない!
そうか、早く起きなきゃ!
だったらまず、その前にしなきゃいけないのは――――
1.イリヤを連れ戻す。
2.イリヤを連れ戻す。
→3.イリヤを連れ戻す。
考えるまでもない。
今の自分には、それ以外の選択肢なんて存在しない。
じゃ、そんなわけで、改めてお休みなさい……zzz
………………………………。
………………。
………。
朝。
うっすらと片目を開ける。
そこには予想していたような朝日の眩しさはなく、世界の境界は曖昧で、辺りは靄がかかったようにうすぼんやりとしていた。
目を閉じる。
だが、再び眠りの中に落ちてゆくことは許されたなかった。
肌を突き刺すような寒さが、寝ぼけていた僕の頭を強制的に覚ましてゆく。
だんだんはっきりと覚醒していく意識の中、自分の吐き出した真っ白な息が視界を濁らせているのだと気づいた。
その事実に少し安堵する。
と同時に、昨晩見たありえない“夢”のことを思い出していた。
たまご:「……やっぱり夢、だよな。それにしてもいやな夢だったな」
まさか月姫に続いて、彼奴がFateに出演することなんてあるわけないじゃないか。
考えすぎだ。
そもそも琥珀は性格キャスティングだったはずじゃないか。
僕はあるべき現実にこれ以上ないほどに満足していた。
――――それにしても今日はひどく冷え込む。
寒さで悴んでいる両手を幾度かこすり合わせながら、ゆっくりとした動作でテレビのリモコンに手を伸ばした。
――――ボゥン。
鈍い音がして、ブラウン管に電気が通っていく。
たまご:「……ほらね」
僕は独り、得意げに呟いた。
テレビに映っているのは見慣れた絵。
聞こえてくるのは見慣れた声だった。
やっぱり夢、だったな。
何より、今画面に映っているモノがそれを証明してくれていた。
――――ぱにぽに。
もちろん“だっしゅ!”なんてふざけたものはついてないし、キャストだってドラマCDのままだった。
ハハハ。
何も心配することなんてないじゃないか。
大体地味キャラのはずのくるみに、異様に存在感のあるキャスティングをすることなんて、あるわけな、アッ………………………………………………………………………
……………………やちー……のまま……が………よか…………った………………。
突然、辺りが闇に包まれる。
先ほどまで感じていた刺すような冬の寒さも、もはや感じられない。
光はおろか、自身の吐いた白い息さえも見えない、完全な暗黒の世界。
たまご:「ああ、そうか」
急激に薄れてゆく意識の中、僕はそのことに気づいてしまった。
――――僕はどこかで選択を誤ってしまったんだろうな……。
…………ああ、だがわからない。
思い当たる節がありすぎて、自分の犯した“致命的なミス”がなんだったのか、
確信することはできなかった。
そうか。
もしかしたら、そもそも彼奴と出会ってしまった自体――――
???:「……バリバリ…………………………………………………………フンッ!」
DEAD END